来訪者/帆場蔵人
いつものように歩いていたのに
いつものように犬と散歩していた夜に
いつもは足を止めもしない場所で
足が歩みを止めて犬が不思議そうに
足のまわりをくるくると回っている
線路下の細い道が口を開けて夜を
吸い込んでいる、あの先にはカエルの
墓がある、湧き水の池のほとり
幼い頃に友たちと戯れにいたぶり
殺したカエルの墓がある
友たちのひとりが、皆が帰った後に
石の上に叩きつけられたカエルを
池にかえしていた、私に気がつくと
カエルのお墓はみずのなか、と笑った
ちゃぽん、と水が打たれて響いた
彼とはもう会う事はないだろう
風の噂に九州辺りで台風の日に
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