来訪者/帆場蔵人
 
いつものように歩いていたのに
いつものように犬と散歩していた夜に
いつもは足を止めもしない場所で

足が歩みを止めて犬が不思議そうに
足のまわりをくるくると回っている

線路下の細い道が口を開けて夜を
吸い込んでいる、あの先にはカエルの
墓がある、湧き水の池のほとり
幼い頃に友たちと戯れにいたぶり
殺したカエルの墓がある

友たちのひとりが、皆が帰った後に
石の上に叩きつけられたカエルを
池にかえしていた、私に気がつくと
カエルのお墓はみずのなか、と笑った

ちゃぽん、と水が打たれて響いた

彼とはもう会う事はないだろう
風の噂に九州辺りで台風の日に

[次のページ]
戻る   Point(9)