点の誘い・線の思惑 一/
ただのみきや
いを
再び得ようと
燐寸を擦る
燃え上り燃え落ちる間
夢を見ることも叶わずに
白い煙の往く様を
空っぽのまま見つめている
餓えが目を醒ますまで
記憶の中の幸福は
行為では再現できない
永遠の面影
もはや彼岸だ
けれど、わたしは
醜男ナルキッソス
水鏡に映った真逆の姿に恋をした
彼女を抱かんと
深みへ潜ってそれっきり
彼を愛する者などいやしない
エコーはナルキッソスが書いた詩
遺書みたいに残っている
《2020年1月12日》
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