点の誘い・線の思惑 一/ただのみきや
窓
梢に残された枯葉一枚
干乾びた想いの欠片
命はすでに記憶もない
生者の心は生乾き
過去と重ねて今を見る
いっそ綺麗に散ったなら
鴉が乗ると電線がゆれた
墨で描いた濃淡
蕾一つが殊更に
競うか戯れるか
風の合図に黒い花
ふたつ開いて弧をすべる
燐寸人
ひとつの蕾の中で
全てが整い満ちて
戸惑いつつおのずから
世界に向かってゆっくりと
奥ゆかしくも
誇らしげに開き
強い香りを放つ
――やがて
艶やかな花弁は萎れ
色を濁し香りも絶え
重さを失くしながら
声もなく散って往く
そんな意識の移ろいを
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