詩にうつつを抜かしている/こたきひろし
昨夜遅く何のまえぷれもなく
母親があらわれた
彼女と最後に会ったのはいつだったか
彼女と最後に別れたのはいつだったか
薄情にもそれを忘れてしまった
十年か二十年か、それさえも分からなくなっていた
いずれにしても
どうしようもなく歳をとっている筈だし
老醜をさらけ出しているに違いない人は
別人としか俺の眼に写らない女人と化していた
腰を抜かす位に若返っていたのだ
俺の眼は先ずいちばんにふくよかな胸に引き寄せられた
そして次に肉感的な尻に持っていかれた
ヤバイ
これはヤバイ
あれっ?俺は異変に気づいた
同じベッドの上で寝ている筈の嫁がいない
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