墓石/ひだかたけし
 
均衡は崩れている
もうとっくに

)大地の空の裂け目から
)鮮血に染まった手を伸ばす人、人、人
)同情でも訓戒でもなく
)ただ助けを求めて

  〇

独り冷え切った身体を震わせ
汚れて無垢なるその瞳を見入れば
曇天、空が割れ
落ち広がる黄道
この吉日に
異様に平然と続く世界を後に
あなたはもうとっくに此処を抜け出し
灯りの点いた街並みの上を
飄々と飛んでいるのか

)見事な光沢放つ黒御影
)堆積した記憶の壁となり
)時流と共に凝固し立ち塞がり

  ▲

在ることの謎を忘却した世界を
人格の尊厳が通り過ぎていく



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