明々後日の方向/ホロウ・シカエルボク
くれたのに悪いけど」、俺は諭すような口調でそう言った、俺がそういう喋り方をするのを昔のそいつは嫌いだった、でもいまのそいつはそうかぁ、と、不自然な愛想の良さで答えただけだった、「わかったよ、忙しいとこ悪かったね、また電話するよ、今度は酒でも飲もうぜ」、ああ、と俺は答えて電話を切った、そしてソファーに深く腰を下ろしてため息をついた、猫撫で声じゃない、真剣なため息だ…しばらくそのままぼうっとしていると、あいつと一度だけ喧嘩したことがあるのを思い出した、原因はなんだったか忘れたが…「お前はいつも心のどこかで俺のことを軽蔑しているんだ」怒り心頭といった様子であいつはそんなことを叫んだ、どこか飲み屋街のど真ん中だったな
お前あのときのこと覚えてるか?―あの台詞いまもう一回言ってくれないかな?
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