波浪/霜天
 
それは どこですか
滑り込むような夕凪ですか


平坦な気持ちを
乗り継ぐようにして目覚める朝には
透明なコーヒーの
一番底にある苦味を
噛み締めるようにして始まりになる
遠くない窓際で
波音が破裂しながら、遠くなる


筋道を、波間の、音と音との隙間を
使い古した地図の上
コンパスも迷うほどの波音に
方向指示器を出したまま
戸惑ったままの指先で
乗り継いでいくバランス
地図にない道が増えていて
また少し遠いのかもしれない



波浪
間違えようもなく 真っ直ぐの
筋道を、君への
通り過ぎて、どこかへの
薄い胸で呼吸を繰り返す
朝のコーヒーを味わう、透明な余白に
耳元で波音が続いている
どこまでも
どこまでも


続くはずの波音の一瞬の静けさが僕らの間隔に割り込んでくる
こと

それは どこですか
滑り込むような夕凪ですか
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