201912第四週詩編/ただのみきや
*
昼の薄暗い店
キーケースからはみ出した
鍵がぼんやり光って見える
蝶がビロードの翅を立てて止まっていた
氷が解けてもグラスが溢れることはなく
微かな光を傾けてもピアノは眠ったまま
触れると蝶は灰になり
影だけがカウンターの上を横切って消えた
昨夜の出来事はたぶん本当で
夢のようでも起きたことなのだろう
二日酔いに効く音楽などそうそうない
脳が頭蓋をノックしている
目を閉じると
外では陽が射しているように感じた
ポケットを探ってもやっぱり何も無い
後悔はないが安らぎもない
病んだ男のように振舞おう
次の欲望が目覚めるまで
*
膝枕し
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