約束からは逃れられないから/こたきひろし
 
放り込んでしまえば
すべては済むんだから

妻のお母さんには
その最期の日に頼まれている
「娘の事宜しくお願いします」
私は黙って頷いた

その約束からは逃れる事なく
逃れようもなく
必死に妻を家族を支えてきた

けれどわが身の老いには
かてる筈がない

身を裂かれる想いがそこにはある
今は淡々と日々を過ごしているけれど
きっといつか
ステージの幕は降りる

それは母親の胎内に芽をふく以前からの
得体のしれない存在との
命と引き換えに交わした約束だから
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