無敵の人(初稿)/れつら
 
ことはない
こんなにやさしくされたことはない
それを やさしさと知っているけど
それがなぜかはよくわからない
そもそも記憶がない 記憶する気もない
記憶を保持する容量が足りない
覚えていないといけない
と思った覚えがないし 思えない


真夏にキラキラする海まで行って、きゅうになんか叫ぶ声を聞いて、眉を顰め目前
を跳ねる光線が皮膚を焼き、殺すほどではない爛れが全身に廻り、痒みに爪を立て
る、掻きむしる、駆け巡る記憶の覚束なさ、恥ずかしさに沸騰し、赤面すると急
に、駆け出すと目立つんじゃないかって、誰かの役に立ちたかった、目立ちたいわ
けじゃなかった、肺が熱くなって息が吸
[次のページ]
戻る   Point(1)