周ちゃん語に耳を澄ます/服部 剛
取り戻しほっ…と一息ついた頃
今度は周ちゃんが
「むううっ!」って体を反らして
駄々をこねるには理由(わけ)があり
<周ちゃん語>を翻訳すると
「パパちゃんと僕にかまって食べさせて!」
だそうである
妻と息子のはざまにはさまる日々は
さておき
――周ちゃん、君がママのお腹の中で
丸くなっていた頃はね
「耳」に似た姿で包(くる)まって
ママの安らかな鼓動を聴きながら
小さな目蓋を閉じていたのだよ
と、八才でまだ話さない周ちゃんに
話したわけではないのだが
もし、人間が生まれる前の姿勢が
「耳」の形であったなら
途上の物書きでろくに稼がず
好きにやらせてもらっているゆえに
日頃頭の上がらない
妻の言い分や
<周ちゃん語>の訴えに
耳を傾けてみましょうか
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