無題/朧月夜
 
いる。

誰もどこへも行こうとはせず、
わたしも一人きりでじっとしていられるのだと。

機械仕掛けの古城では、
冬越しの準備に人々が忙しい。

誰も、この荒野に流れていく空のことを、
気にも止めず、見もしない。

今、君の手に何が包まれているのかを、
わたしは考えようともせずに感じている。

いつか、春は来るのだろうかと、
君は悩み抜いているのに違いない。

この季節の果物を一つ、わたしは買った。
それを誰に捧げるでもなく、氷の柱を踏んでいく。

機械仕掛けの古城に、
冬の点し灯が灯るのはいつのこと?

空疎な空を見据えながら、
掌のなかの空色を持て余している。
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