胡乱な冬/星染
東に東に行ってそれで見えるようになった建物が
大きいほど小さくなれる気がした
本当は寒いところならどこでもよかった
この季節に
身を預けたままぼんやり生きたい
ままならない生活、体、触れられないもの、ほしくてたまらなかったものもすべて
季節のせいにしてしまいたい
深夜のスーパーの半額の刺身、美味しいかって訊かれたらわからんけど、でも窓を開けて、冷たい風にさらされながらべたべたの生魚を食べて、救急車がうるさくて、それで生きてる気になれるんなら、ああそんなだから冬、冬は、孤独を許してくれてるっておもうんかな、
好きな歌が聴けなくなって
着てた服が着れなくなって 何も食べられなくなって
読めてたものが読めなくなって 話し方がわからなくなって
それでも許してくれそうな季節、人を殺しそうな、ひどくやさしい季節、
明け方の歩道を、わたしは半透明のゴミ袋を抱えて、朦朧として歩いていく
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