中村くん(改訂再録)/ひだかたけし
な髪の毛も眉毛も瞳も黒々としているのに色白の
明らかにアイヌ系の彼女は繰り返し僕に言った
「これでよかったのよ
世間様に散々迷惑をかけたあの子は死んでお詫びするしかなかったの
これでー」
僕は何を言ってんだこのババァ!と思った
千年は絵の天才だったんだ
その才能を見抜いてちゃんと指導できる教師と大人と巡り会えなかっただけなのだ
だから彼は自分でコントロールできないエネルギーを持て余して暴れたんだ不良になったんだ
僕は混沌とした怒りの渦の中でそう思った
中村くんと絶交して彼を無視し続けた自分に絶望しながら
母親から譲って貰った『孔雀の絵』(区のコンクールで金賞になった)は今でも僕の手元にある
不思議なことに今でも小学二年の時に初めて観たその印象に変わりはない
壮麗な青紫と金銀に輝く孔雀が大きく羽を広げ
今にも画面から跳び出して来ようとしている
その印象は変わらないどころか
僕の中でますます強くなる一方だ
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