雪の降らない街に大雪が降った/こたきひろし
 
自室のドアノブに炬燵の電気コードを縛り付けていた
そのコードを自分の首に巻き付けて全体重をかけていた

第一の発見者は彼の祖母であったらしい
祖母は一階の居間で炬燵に入りながらテレビを見ていた
と言うのは私の想像で実際のところはわからない
家の中には祖母と孫の二人だけだったと話は聞いている
共稼ぎの父親と母親は勤めに出ていたとか

雪の降らない街に大雪が降っていた
その日に妻の従兄弟が自死したからと言って、この私に特別な感慨は沸き上がらなかった

訃報が電話で届いたから夫婦で葬儀に参列した
死者には申し訳ないかもしれないが実に迷惑な話だった

第一
彼と会った事がな
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