/桐野ゆき
花が咲いた
春だ
薄紅色の花弁が私の肩をなでるとき
気づく春の足音を
やがて迫りくる夏の季節を
フラッシュパック、あるいはデジャヴのような
あの瞬間よ
春を知らせる花びらは
どこへ飛んでいくの
寂しくなるから
一人にしないで
ああこの不思議な思い
誰かとつながっているような そんな人のぬくもりを
この花に覚える
私は花を愛してしまったのだろうか
ねえ 連れて行ってよ
わがままはいわない
ただ手を握って 私を忘れないで
また来年の春この場所で待ってるから
絶対に
それにしても。
春にしては今日は暑すぎる
そんなに暑いと桜が早く散ってしまうよ
まだ別れたくないのに
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