童話と実話の歪み/こたきひろし
うっとなってしまったが
欲望が勝った
けれど
たまらず口から口を遠ざけ
乳房を執拗に愛撫しだした
それからついには股間に手を伸ばそうとして
あれっない
あらためて気づいた
それは
当然の結果だった
若い漁師はいっぺんに興奮から冷めた
それから悪い企みを思い付いた
せっかく人魚の生け捕りにしたのだから
夜が明けたら
荷車に積んで見世物小屋に売ってやろう
高く売れなくても幾らかにはなるだろう
生きたまま運んだ方が高値がつきそうだが
途中死んだら
それはそれで買ってくれるだろう
半分は人間だが
半分は魚なんだからさ
もし
これを読んだら
あの天才詩人も苦笑いするだろうな
北の海の方角を眺めながら
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