童話と実話の歪み/こたきひろし
雨がアパートの一室の屋根を叩く
時刻は午前零時を回っても
眠れなかった
天井からぶら下がってる電球は裸
彼女の想いは天井を突き抜けて空を飛んでいる
飛んでいると言うよりは
雨のなかを泳いでいる魚かもしれない
それは
まるで暗闇のなかの海
下半身にはいちめん鱗
魚そのもの
上半分は人の体
髪の毛は長くのびている
女だった
そんな状況下で
女は美しく設定されている
でないと
物語は始まらない
ひなびた漁村の海
雨に打たれながら若い漁師が小舟を出す
人魚を生け捕りにしたくて
人魚はずっとずっとそれを待っていた
人魚と言えども退屈な毎日の
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