ノート(56Y.12・13)/木立 悟
夜の白い柱
湯と水の境い目
置いてゆく
おまえだけを 置いてゆく
溶岩の鳥 溶岩の鳥
魚の口の渦から
ひかり放たれ
見える径の向こう
複数の地下の部屋に
立て籠もった音楽家たち
扉には仏蘭西語
白い金属の壁
海底の砂の火
痛みと水
指の抜き差し
濃霧の森を分ける風
肺の痛みがひとり
夜を押しのけ歩いていた
禁止を告げる光に焼かれ
煙の羽をたなびかせながら
燃える浪が
幾度も真夜中に立ちはだかり
庭を濡らし消えてゆく
角と羽と尾が来る前に
暗い巻き舌
飛び去る音
雪から雪への子狐
振り返る夕焼け
魚の口から離れた鈴
静かに沈み
海底をゆく足跡に落ち
歌はつづく 歌はつづく
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