明るい空に月/mmnkt
明るい空に月が浮かんでいる
それ自体は珍しくないが
今日は月がやけに光っている
普段ははぐれた赤ん坊の雲のように
白く存在感薄く浮かんでいるのに
今日のはどっしりとまんじゅうのように
はっきりと存在を示し黄味を帯びて光っている
「まだ夜じゃないですよ」
「たまにはええやろ」
「そういう気分なんですね」
「そういう気分なんや」
月が夜に追いつくのでなく
夜が月に追いつく
「月さん、今日は早いね」
「おう、夜。やっと来たか」
「何だいその、私が待たせたみたいな」
「まあええがな、たまには」
「まあいいけどよ。では今晩もよろしく」
「おう。よろしくな」
月が早くに光ったのは
ただの出来心であったろうか
あるいは夜勤ばかりが嫌になり
ちょっと反抗してみたのだろうか
たまには交代してやろうと密かに思う
太陽であった
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