自分の存在がやたらうざいと思えても/こたきひろし
餓鬼の頃
俺んちは貧乏で大家族だった
家はあばら家で年中すきま風が入ってきた
破れ障子とぼろぼろの木戸は閉めてもあまり意味がなかった
防犯の役目はしていなかった
もし夜中に何者かに襲われたら一家皆殺しにされても
何の不思議もないだろう
とは言っても
あの時代あの山間の寒村に点在していた家は
ほとんどが似たり寄ったりだった
一家は八人家族
祖母と両親と兄一人姉三人そして俺を含めて
家は五右衛門風呂
薪で焚いて沸かした
風呂場を囲う仕切りはなかったから
俺は祖母と母親と姉三人のすっぽんすっぼんを
よく目にしていた
父母は農作業が忙しくて
あま
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