K電車/AB(なかほど)
ほどけた点に射し込む
光や眼差しや言葉や温度が
編み込まれてゆくのかと
あの人に似ている影を追う
それは若い姿の父と母か
まだ幼いころの自分か
探しているつもりはなかった
探しているつもりはなかった
かもしれない
なんて
三崎口行きに乗り込んだとんぼは
電車と僕と同じ速度で
すいとする
同じ状況を
相対速度で穏やかに説明してた先生
のことは好きだった
久里浜で降りた君は文庫に帰れるのかな
百の眼に映る知らない景色は
楽しいかい
すっかり乗り過ごした僕も
すぐに引き返す気にはなれない
今日もKはゆれている
こころは、こころは
かっくんって
戻る 編 削 Point(2)