部屋と雨降り人形/朧月夜
かたことと音を立てて、
工具を扱う。
わたしの友人は機械たち、
だから直してあげなければ。
かたことと音を立てて、
工具を扱う。
彼らは眠らずに、
ただ働き続ける。
それとも眠っているの?
かたことと音を立てて。
雨降り人形のわたしは、
部屋のなかに雨を降らせる。
かたことと音を立てて、
わたしと機械たちとは、
誰にも聞こえない声で話し合う。
いいよ、今日の雨は。
そうね、今日の雨は。
雨降り人形のわたしの、
わたしの仕事。
そうね、でも、
行かなくっちゃ、
わたしがいては、部屋は海となってしまうから……
(そんなことないよ)
(そんなことないの?)
かたことと音を立てて、
機械たちを直した後には、
雨降り人形のわたしは、
どこへともなく去ってゆくのだろう。
でも今は、
彼らといっしょにいる。
(雨降り人形よ、
部屋に雨を降らすのがお前の仕事)
小雨が大雨にならなければ良い。
だれかが、そう言って引き留めてくれて。
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