ふぐ/春日線香
ふぐをもらった
皮がとても硬いので扱いかねていたが
家庭用の鋏で簡単に捌けるらしい
表面の針をぼきぼき折って
力を込めて刃を入れると
驚くほどオレンジ色の肝がこぼれ落ちた
身もガラも肝も一緒にして
野菜を加えて水炊きにすることにした
ぐらぐら炊いているうちに出た灰汁を
お玉ですくって流しに捨てる
浮かぼうとするふぐの身を
大量のネギをかぶせて汁に沈める
いい匂いがしてくる
居間には家族が揃っている
父と母、妹、祖父
わたしはそれを隅で見ている
鍋つかみをした母が鍋を持ってきて
卓袱台の真ん中に置く
蓋を取ると湯気が上がって
祖父の眼鏡が曇った
ふ
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