霧雨のなかの幽霊は/朧月夜
 
か、
傘もささない幽霊は。

……

”もちろん、傘なんてさせるはずもない”

誰かが一杯のコーヒーを飲んでいるとき、
そこにも、
かしこにも、
見えない輩がいると、

誰かが気づいている。
誰もが気づいている。
だから、誰も止めようとはしないのだ、

皆、気づいている。

歩いてゆく幽霊のことを、
傘もささない幽霊のことを、

希望とか、不幸とか、そんなものを仮託されることも拒絶して、

ただ、歩いて行く……。

霧雨のなかの幽霊は、
ほんとうに遐(とお)いところへと。
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