霧雨のなかの幽霊は/朧月夜
か、
傘もささない幽霊は。
……
”もちろん、傘なんてさせるはずもない”
誰かが一杯のコーヒーを飲んでいるとき、
そこにも、
かしこにも、
見えない輩がいると、
誰かが気づいている。
誰もが気づいている。
だから、誰も止めようとはしないのだ、
皆、気づいている。
歩いてゆく幽霊のことを、
傘もささない幽霊のことを、
希望とか、不幸とか、そんなものを仮託されることも拒絶して、
ただ、歩いて行く……。
霧雨のなかの幽霊は、
ほんとうに遐(とお)いところへと。
戻る 編 削 Point(3)