霧雨のなかの幽霊は/朧月夜
が、
歩いてゆく。
こんな靄った空の下でも。
愛していたのだろうか、
幽霊が、
傘もささずに歩いてゆく。
もちろん、傘なんてさせるはずもない。
が、
愛していたのだろうか。
愛が形にしたのだと、
今は信じても良い気がする。
”今日日は電線に雀も止まってはおらぬ”
そう、電線に雀も止まってはおらぬ。
が、
愛していたのだろう、きっと。
だから、傘もささずに歩いてゆくのだろう。
”電車になんて乗らないね、きっと”
そう、電車になんて乗らない。
その幽霊の呪いを解く呪文はね……?
ああ、
呪いを解かれることを望んでいるだろうか、
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