エレン・ファヴォリンの雪/朧月夜
 

 フィヨルドの上で、何をしたんだろう。きっと、帽子が飛んだんだ。それを追いかけようとして、思いとどまって、帽子はフィヨルドの底、海の底に消えたよ。……それからさ、ねえさんが僕たちの島で夏をすごすようになったのは。ねえさんはいつだって、一鉢の花をかかえてやってくる。まだ、咲いていない花を。僕は、ねえさんとともに来る夏を待っている。白樺の林や、釣り上げられる魚たちといっしょに待っている。砂利の小道や、薪割りされた焚き木たちが待っているように。僕は、夏を待っている、僕がいつか大人になる日を。僕は待っている。


[ Ellen Favorinのイメージによせて ]
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