エレン・ファヴォリンの雪/朧月夜
僕の薪小屋に雪がふったよ。照り返しがまるで白夜みたいだ。あの夏、ねえさんは船着場から太陽を見ていた。そんなに遠くにあるものを見ていて、どうするのって、僕聞いたんだ。そうしたらね、
「太陽は遠くなんか、ないわ? 太陽はすぐそこにあるものよ? わたしたちがちいさいから、太陽は遠くにあるように、見えるのね……」
ねえさん、そう言ったんだ。僕のほんとうのねえさんじゃ、ないんだよ。僕を弟のように愛しているから、僕はねえさんだって、思っているんだ。あの夏にね、夏至のころだったかなあ、僕たちで裏山に出かけたときだ、白樺の林をぬけて、あちこちにある苔をふんで、幹にそっと触れたりしながら、僕たち登っていった
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)