通り魔たち 5/春日線香
 
闇に飲まれる海を
歩いてくる人々がいる
靴を履かずに
埋立地から町へ
明かりへ







事故の影響で
ダイヤは一斉に狂った
側溝に流れ込む雨は
こんなはずではなかったと
地上を蔑んでいた







鳩が鳩を食っている
噴水はからからに枯れて
人の気配は久しくない
棚が倒されたコンビニの
自動ドアが執拗に開閉を繰り返す







一室は閉め切られたまま
大人の背丈ほどの雪だるまが
溶けずに佇んでいた
ちかちかと
蛍光灯が明滅している







取り壊された後でも
まだ建っている
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