恋情は火になって/こたきひろし
明子さんの後ろを見た
背中の肌が露出していてブラジャーのホック辺りも丸見えになっていた
俺はにわかに手が震えだして直ぐには触れなかった
人に見られたら恥ずかしいから早くしてくれない
と
明子さんは急かせた
その言葉に慌てて俺はファスナーを閉めていた
その直後に俺はとんでもないことを言ってしまった
明子さんってバージンなの?
するといきなり振り返って
明子さんは俺の顔を平手で叩いた
子供が生意気な口をきかないで
そして答えた
あたし正真正銘の処女よ
俺だって正真正銘の童貞だったが
それからしばらしくして
明子さんはマスターと何かと親密な関係になっていた
そしてあの日から
明子さんはいっぺんした
それまでのお嬢さんお嬢さんらしい
雰囲気から
長かった髪をショートカットにして
薄かった化粧をあつめにして
口紅は魔性の紅い色にかえていた
きっと少女は
大人になったんだろう
俺の淡い恋情は冷たい水をかけられ
それでも引きずってしまった
女々しい十八歳は
終わりかけていた
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