恋情は火になって/こたきひろし
 
若くて健康な女のこが
突然髪のスタイルを変えたり
化粧を厚くしたり
口紅を血のいろにするには
それなり訳があるんだと知ったのは
十八歳の時だった

ほのかな想いや憧れは抱いていたけれど
それをけして口に出したり
素振りにさえ見せることも躊躇っていた
純情無垢な未成年者だった俺

彼女は1つ歳上の明子さん
どことなく女優のあの人に似ていた

長野県から上京して短大に通っていると
自己紹介された
親の仕送りでアパートを借りて
千葉に近い街から都心まで通学してると言う

駅からアパートまでの途中にこの店があって
アルバイト募集の看板が出てたから
思いきって応募
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