生まれた土地と育った歳月/こたきひろし
生まれた土地と育った歳月
は
人の命の岸辺に深く打ち込まれた杭
けして抜けない
もんだ
戸籍に記された
名前と生年月日
は
頭の中に印字されて
いつ聞かれても
書かされても
覚えて
いるさ
それを死ぬ瀬戸際まで
淀みなく
答えられたら
幸せかもな
運良く
女房子供持てたよ
だけど
その分は
多く泣いたよ
時には喚いたさ
振り返られば
それも幸せに幸せに思えるまでに
歳を重ねてしまった
女房子供持てたよ
すっかり歳を取ったよ
それでも
俺の娘くらいに
若くて健康な女のこに
ついつい目がいくのさ
お爺ちゃん
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)