今を生きているのは何かの間違い/こたきひろし
 
時代から遅れている

線路の上は日に炙られた枯れ草の匂い
歪んだ電車が走る

腕に時計は嫌だ
なのに
心に繋いである懐中時計は
いつも壊れている

生きている
というのは
そう言う事なのか

だから
電車は定刻通りにやってこない

旅行カバンの中には
狂った方位磁石と綻びだらけの衣類
そして
染みのように拡がる地図

意味が解らない

電車は定刻通りにやってこないから
ぼんやりと待つだけの時間

無論
乗客は偶然の集合

意味が解らなくなる

もしかしたら
全ては
鬱の幻覚

今生きているのは何かの間違い

誤解の連続
かもしれない

全ては
鬱の妄想
かもしれない世界

尽きる事のない

謎は解けない


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