赤の女王/
大町綾音
女王。誰も走り続けることなど、無い世界で。貴女一人が走り続ける。盲目の赤の女王。燈し火を揺らす風も、燭台に飾られた蝋燭も、迷い続ける貴女に目をくれず、ノクターンの響きの中で、東から西へと流れる月の下に、色づいていく。──赤の女王。女王一人が走り続ける、誰もが目をくれず。悲しき赤の女王……。孤高の。
ふと。──空隙に、薄らぐ形象(かたち)の雲と霧とは降るのだろう、留まり得なかった者の言葉として。想いのように……。
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