星のシンフォニー/丘白月
 
雲が帰って

空には誰もいない

見上げるすべてが

星と月だけのものになる

やがて

聴こえてくる

オーケストラの音が

目の前まで星が降りてくる

月が指揮をする

コンサートマスターが目で合図する

太古の音が

長い旅からたどり着く

星の背中にありがとうと書いた

金星が草むらで見ていた

まだ夜明けは遠い

冬の星座が組曲を

ゆっくりと始める

一人じゃ寂しいと

夜空を見るとき

聴こえてくるのは

衛星と惑星たちのシンフォニー

明け方 一番に目を覚ましたバラが

金星が置いていった涙を口にする

通り過ぎてゆく澄んだ風に

ほのかに色がついていく

消えることのない

やさしい色がどこまでも

戻る   Point(2)