見えない凶器/都築あかり
 
簡単に吐ける言葉たちが
ありとあらゆるところに
飛び交っている

いとも簡単に実現されることなんて
知る由もなく、その言葉たちは
屋上にいる彼女の背中を押した

遺書も残さなかった

きっともう言葉が文字が
憎くて憎くて仕方なかったのだろう

親指で発せられた文字が
彼女にとっては銃弾となって
心を撃ち抜かれていった

誰にも聞こえない銃声が
誰にも救えない痛みが
彼女を殺した

せめて唯一の声は
地面に叩きつけられた
体の音と
一面に広がった
真っ赤な血液
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