碧い鴉の赤い十字架/アラガイs
 

今日も郵便受けによけいなチラシが差し込んであるのだが、あの赤いジャージ姿の少女なんだと思えば許してしまう。
かってに裏庭から入り込んできて、一度文句を言ってやろうと車の座席から飛び出そうとして止めた。
それ以来彼女に出会えるのを待っていたような気もする。高級車を手に入れた11の月の11日だった。
その日出かける寸前に足音がした。
郵便受けにやって来たのはあの少女だった。
はじめて間近に見た少女の骨格は思っより大人で、長めの髪は後ろにしっかりと結び、スラリと背も伸びていた。小さな口元が緩むと赤いジャージ姿もなぜかたるんでみえた。
わたしは思わず(いつもご苦労さまだね)財布から一枚取り
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