ゆるして。/桜鬼弓女
「おやすみ」という言葉は
「さよなら」よりも痛い
貴方がたった独り わたしの手の届かない夢に堕ち
幻影達と 誰も知り得ない言葉を仕草を表情を交わすのを
わたしはとめられない
「おはよう」という言葉は
「愛している」よりも沁みる
めざめたばかり 今日という日の中に生まれ出たばかりの貴方を
確かにわたしが抱きとめたのだ という 悦び
そんなたましいのふるえを
わたしはとめることができない
わたしには貴方を抱きしめる腕はないけれど
ことだまを連ねて貴方をそっとしばりたい
ゆるして。
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