通り魔たち 4/春日線香
す虫と戯れていた
*
雲の上はるか
青空の小さな染みとして
のんびりと優雅に飛び去る
巨大な牛の舌
*
幾重にも重なった
花弁をむしっていくと
恐怖に表情を歪めた
顔が現れることがある
*
雨垂れの跡が
壁に格子のような模様を作り
その中に
仲の悪い姉妹が暮らす
路地は血の色の夕日
*
描いた者も忘れている
看板の隅の黒猫
伸びをする姿勢のまま
いつまでも生きて
この世が先に終わる
*
断ち割られた犬が
全力で駆け回っている
校庭はぬかるんで
早すぎる冬の
心音の夜が始まっていた
*
砂から手足が出ているのが
流木のようでもあった
波打ち際に海月が寄せて
骨の海亀も
産卵にやってきた
*
フロントガラスには落ち葉が積もり
車の中を見えなくしていた
ほんの少しだけ腐敗臭が
外に漏れている
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