通り魔たち 4/春日線香
 
す虫と戯れていた







雲の上はるか
青空の小さな染みとして
のんびりと優雅に飛び去る
巨大な牛の舌







幾重にも重なった
花弁をむしっていくと
恐怖に表情を歪めた
顔が現れることがある







雨垂れの跡が
壁に格子のような模様を作り
その中に
仲の悪い姉妹が暮らす
路地は血の色の夕日







描いた者も忘れている
看板の隅の黒猫
伸びをする姿勢のまま
いつまでも生きて
この世が先に終わる







断ち割られた犬が
全力で駆け回っている
校庭はぬかるんで
早すぎる冬の
心音の夜が始まっていた







砂から手足が出ているのが
流木のようでもあった
波打ち際に海月が寄せて
骨の海亀も
産卵にやってきた







フロントガラスには落ち葉が積もり
車の中を見えなくしていた
ほんの少しだけ腐敗臭が
外に漏れている







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