鶏だって/こたきひろし
 

父親が
鶏小屋から一羽を選んで
潰した
それはまるで死刑囚が鉄格子から出されるように

潰すとは
殺して包丁で解体する事だ

それはとても残酷な光景だったが
子供らの前でも父親は躊躇いなくさばいた

私は興味深く
眼を反らす事もなく
その一部始終を見ていた

そして夜には料理された

翌日の朝
小屋のなかで
鶏は一羽分欠けて
鳴いた

いつもとかわりない鳴き声の筈だ
しかし
子供だった
私の耳には
悲しくて泣いているように聞こえた

悲しくて泣いているように



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