鶏だって/こたきひろし
朝は一番に鶏が鳴いた
庭の隅の小屋のなかで
戦後十六年か七年の頃だったと思う
私は小学校に上がって間もなかったと思う
山間の辺鄙な場所は
食料品に恵まれていなかった
私は痩せこけていた
あの時代
忘れられない
いつも腹を空かせていた
食べられるものなら
田んぼの土手に生えた草まで食べた
都会から隔離された古里では
ほとんどが自給自足だった
主食は米と麦が半々だった
ジャガイモ。サツマイモ。トウモロコシ。自家製の沢庵。味噌も自家製だった。
トマト。胡瓜。スイカ。
畑で取れた。
そして肉
滅多には食べられなかったが
年に何度か
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