老若男女恋愛事情 【都々逸】/ただのみきや
 
宵に呼ばれて寄れば良い酒 酔ってよろけた夜の路


魚も鍋も奉行がさばく アクをすくって膳こらす


熟した柿はむかずに啜れ 女むかずにゃ啜れない


周回遅れ時代と競う 若さ失くして馬鹿さだけ


こいだからこそ進みもしたが 想いこがれて空回り


枯葉踏みしめ文したためて 慕うためらう秋の道


察してほしいそう言いながら 言葉にしてと責めたひと


指で背中に好きと書いたら 少し左と言ったやつ


一人きりなら怖くもないが 急所からだの外にある


子供ら捨てた棒の切れ端 三羽鴉がまた遊ぶ


相手何人変えたところで 恋は唯一あと接ぎ木


定規で宇宙測りゃしないが 時計の匙でなに量る


好きも嫌いも昔の話 キスの記憶も塩辛く


情にほだされ自分を語る 出会い別れの分岐点





                《老若男女恋愛事情:2019年11月2日》







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