アトリエにて犯行/043BLUE
 

私は憶えたてのコトバをチューブから絞り出した。パレットに、並べ、血塗られたキャンバスに叩きつけた。モチーフは、ウミガメの抜け殻、ザクロの欲望、被爆した妊婦。それらを凝視すればするほど、それらは、私自身である。私は衝撃を待っている。すべてを破壊し粉砕する衝撃だ。私は私自身の手による犯行によって、切り刻まれるのだ。おまえはそれらの肉片を拾い集め、あれこれとつなぎ合わせる。おまえの肢体が美しくベッドに横たわっているその傍らで、ただ永久に未完成のままの不恰好な私という存在がそこにはある。副産物としてのコトバの残骸がヘソの緒のように私の頭部から垂れ下がったまま。そして、その先端でそれらのコトバはまるで細胞分裂を開始するかのように、増殖し、走り始める。私の意志を置き去りにしたまま、まるで、私とは別の生き物のように、エクリチュールは増殖し、走り始める。今夜、私は犯行を繰り返す。アトリエにて、犯行は繰り返される。


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