通り魔たち 3/春日線香
 
バスには人形が乗っていた
窓の外を眺めるのも
母に抱かれる子供も
ハンドルを握る運転手でさえ
皆、焼け焦げたマネキンなのだ







エレベーターの隅に
風船が浮いていることがある
いつも同じ風船のようだ
長い紐が垂れ下がっていて
よく乗客の頭を貫いている







目に墨の入っていない
大きな達磨が商店街に下げられ
折からの雨に濡れて
少し萎んでいるが
膨らむこともある







全身に目をつけた人が
鋏から逃げ回っている
生前の罪でもあるのだろうか
徐々に追いやられて
有刺鉄線の山のほうへ


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