通り魔たち 2/春日線香
 
いた
小鬼が封じられ
長い時間揺すられたのだろう
中でぐちゃぐちゃに潰れている







肉色のなめくじが壁面に蠢き
太陽を避けて移動する
それでアパート全体が
麝香の匂いを漂わせる







どこにも上り口がないのに
八階建ての屋上に設置されたジャングルジム
その骨組みの中を
青い魚影が行き来する







走る霊柩車の屋根に
それは立っているのだが
不思議と着衣は乱れず
口に蛇を咥えて垂らしており
非常に満足げだ







もう顧みられることのない
小さな劇場の地底に
いまだに
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