通り魔たち 2/春日線香
 
カーブミラーに映されている神社は
かつても
これからも
一度も存在しない







残された靴を
一室に全て保管してあるという
棚には老若男女の区別なく
薄墨色をした靴が
きれいに両足を揃えて並べられていた







石段の上から
卵が数個、転がってくる
割れる気配はなかった
下まで転がり落ちてすうっと消える
そしてまた上から転がってくる







用水路から伸びる首が
メトロノームのように角度を変え
なるべく日向に向かおうとする
喉のあたりが寒いのだろう







ある山際の一角に
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