秋の思惟/塔野夏子
秋の思惟が
コスモスの群れ咲く上を流れている
うす青く光りながら
ゆるやかに流れている
それは誰の思惟なのか
知らない……ただ秋にふさわしく
さびしげにうす青く光って
ゆるやかに流れてゆく
もしかすると 私を知る誰かの思惟かもしれず
全く知らない誰かの思惟かもしれず
あるいは遠い秋の日に 私みずからの心を
流れ出した思惟が
めぐりめぐって今此処を流れているのかもしれず
いずれにせよその思惟は
うす青くさびしく光り
群れ咲くコスモスの紅の濃淡と
囁き交わすようで
その色あいのうつくしさを
今はただ じっと眺めている
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