通り魔たち/春日線香
 
ている男が
火葬場の煙突を
ちゅうちゅう吸っている







首の周りに
赤い布を巻きつけたような
そこだけ血まみれになった白馬が
電線を伝って走っていく







どの窓にも顔が映し出されて
等しく激怒の表情を浮かべているが
何に怒り
何に絶望しているのか
自分にもわからないのだ







高い木の枝から
様々な年齢の男女の
胴から下の部分が吊られている
どれも裸で性器がある
鳥のいない雑木林







猫の死骸は常に変わる
緑色に苔生していることも
骨になって散らばっていることもある
時々は生き返って
餌をねだりに行くこともあった







鏡は砕けて散らばり
方々で同じ顔を映す
顔は軽く口を開けている
そこから甲虫が這い出る
何匹も







焼けた金木犀が片付けられて
そこは小さな駐車スペースになった
もう何十年も前のことなのに
まだ香りが漂っている
秋の暖かい日









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