通り魔たち/春日線香
ている男が
火葬場の煙突を
ちゅうちゅう吸っている
*
首の周りに
赤い布を巻きつけたような
そこだけ血まみれになった白馬が
電線を伝って走っていく
*
どの窓にも顔が映し出されて
等しく激怒の表情を浮かべているが
何に怒り
何に絶望しているのか
自分にもわからないのだ
*
高い木の枝から
様々な年齢の男女の
胴から下の部分が吊られている
どれも裸で性器がある
鳥のいない雑木林
*
猫の死骸は常に変わる
緑色に苔生していることも
骨になって散らばっていることもある
時々は生き返って
餌をねだりに行くこともあった
*
鏡は砕けて散らばり
方々で同じ顔を映す
顔は軽く口を開けている
そこから甲虫が這い出る
何匹も
*
焼けた金木犀が片付けられて
そこは小さな駐車スペースになった
もう何十年も前のことなのに
まだ香りが漂っている
秋の暖かい日
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