老いたペンギンのメモ/由比良 倖
発揮するのは当然で、泳げないペンギンが泳げるペンギンを賛美したり、同じくくじけた仲間を励ますことは、自虐だと思ったからだ。僕が泳げるようになれば、自由を感じれば、少しでも楽しいと感じれば、そのとき僕はいくらでも優しくなれる、と思った。でも、その内僕が発見したのは、みんな泳げないなりに何とか生きて、自分が言っていることに真意を欠くと思いながらも、どうしようもなく諦めて、みんな本当は辛いのに、しかもかなり優しく人に接そうと努力している、としか思えなくなったことだ。泳げる人なんていなかった。だから僕は、死ぬまで僕は歩くしかない、と思った。そうして、羽なんて幻想は捨てて、灰色に笑い続けよう、そうすれば、いずれ歩くことにも実感が持てるだろう、みんなと一緒に笑っていれば、少なくとも誰かと、羽ではない不格好な腕であっても、抱き合うことは出来るだろう、と思った。
そう思った矢先、僕は水辺を見付けた。続きはまた書く。多分。眠くなったので。
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