左と右と真ん中しかない/こたきひろし
心に広がる空
心に流れる雲
その下に
広がる原野を
みつめていた
聞こえてくる風の音に
耳を傾けていた
死んだ父親
と
死んだ母親
そして
死んだ姉二人
風の音に入り交じって
死んでしまった旧家族の
しきりに私を呼ぶ声が
聞こえてくる
はるかに遠くから
段々に声は近づいてくる
私は耳をふさぐ
ふさぎながら
その場に
うずくまった
私はここにいる
ここから
離れたくない
だから
呼ばないで欲しい
私には
私の家族がいる
別れたくない
離れ離ればなれになりたくない
呼ばないで
呼ば
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)