左と右と真ん中しかない/こたきひろし
 
心に広がる空
心に流れる雲

その下に
広がる原野を
みつめていた

聞こえてくる風の音に
耳を傾けていた

死んだ父親

死んだ母親
そして
死んだ姉二人

風の音に入り交じって
死んでしまった旧家族の
しきりに私を呼ぶ声が
聞こえてくる

はるかに遠くから
段々に声は近づいてくる

私は耳をふさぐ
ふさぎながら
その場に
うずくまった



 
私はここにいる
ここから
離れたくない

だから
呼ばないで欲しい

私には
私の家族がいる

別れたくない
離れ離ればなれになりたくない

呼ばないで
呼ば
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